ごあいさつ

東海大学外科学系 教授 徳田 裕

東海大学外科学系
教授 徳田 裕

 乳がんは、年々増加して、とうとう現在では、わが国の女性のかかるがんの第1位になってしまいました。今後もしばらくは、この増加傾向がつづくと予想されています。欧米諸国でも、年々、増加しており、すでにわが国の約2−3倍のかかる率になっています。一方、乳がんの死亡率は、わが国では、増加していますが、近年、米国や英国では、減少傾向を示しています。この背景には、検診による早期発見と手術後の再発防止の治療の進歩があるとされています。わが国でも、40歳以上に2年に1回のマンモグラフィ検診が導入されていますが、受診率は、米国の約1/3にすぎません。

 当診療科は、日本乳癌学会および日本乳癌検診学会の精密検査実施機関としての必要条件を満たしており、年間約250人の乳がん患者さんの手術を行っています。また、全国から進行・再発乳がん患者さんの紹介をうけ治療にあたっています。科学的根拠に基づく診療を行うことを原則としており、わが国における乳がん診療のガイドラインの作成に参画しています。患者さん一人一人について、病理診断、放射線診断、超音波診断などの部門と合同カンファランスを行い治療方針を決定しています。大量化学療法や分子標的療法では、先駆的立場にあり、新しい治療薬や診療技術の開発に積極的に参加しています。

 乳腺疾患の診断では、初回の受診で、マンモグラフィ、超音波検査、さらに必要に応じて細胞診あるいは針生検を行っており、可及的短時間に診断をつけるように心がけています。状況により、迅速細胞診を行い、当日にすべて診断をつけることも可能です。手術は原則として、乳房温存術と乳房切除術の利点、欠点を説明し、患者さん本人に術式の選択を委ねています。約85%の患者さんが乳房温存術を受けています。乳房切除術を選択された患者さんでは、希望により、主として腹直筋皮弁を用いた一期的乳房再建術(健康保険適応)を行っています。切除されたがん組織は、免疫組織化学、分子生物学的方法により、種々の予後因子の解析を行い、腋窩リンパ節転移の有無と併せて検討し、がんの中でも悪性度の高い場合や、再発の危険が高い患者さんに対して、科学的根拠に基づき、本人、家族と相談の上、再発防止の補助療法を行っています。再発の患者さんに対しても、積極的な治療戦略をたて、約20%の患者さんで、完全寛解が5年以上続いていることは、再発患者さんにとって、大きな希望と考えています。