当科の紹介

Clinical information

乳腺疾患

乳癌の診断・治療はその専門性が非常に大切な領域であり、日々その内容は進歩しています。神奈川県西部地域では乳腺を専門とする医師のいる医療機関が少なく、私共の施設がその中心的役割を担っています。乳腺疾患治療方針は乳腺専門医の外科医を中心として、病理専門医、放射線専門医、撮影認定診療放射線技師、超音波検査技師と共に合同の症例検討会を毎週行い、チーム医療を行っています。

診断

初回の受診時にマンモグラフィ・乳房超音波検査、必要に応じて細胞診や組織診を行います。状況により、迅速細胞診を行い当日に確定診断をつけることも可能です。マンモグラフィの撮影は、認定マンモグラフィ撮影診療放射線技師を中心に施行しています。乳房超音波検査は体表臓器の認定超音波検査技師を中心に行っています。最近特に増加しているマンモグラフィ検診で要精査となった微細石灰化症例や非触知乳房腫瘤の診断に対しては、積極的にステレオマンモトームや超音波ガイド下による穿刺吸引組織診を行い、非触知乳癌の診断に実績をあげています。

遺伝子診断

当院では遺伝子診断も積極的に行っています。保険適応となっている遺伝性乳癌卵巣癌症候群の原因遺伝子であるBRCA1/2の診断を遺伝子診療科と協力して、術前に行っています。さらに近年、リムパーザが術後補助療法として使用できるようになったことにより、BRCA1/2の遺伝子検査の重要性が増加しています。また神奈川県西部エリアでは唯一、遺伝性乳癌卵巣癌症候群の患者さんに対する予防的乳房切除・卵巣卵管切除を行うことができる施設です。

手術・術後療法

原則として患者さん本人に病名を告知し、乳房温存術と乳房切除術の利点・欠点をご説明した上で術式を選択していただいています。乳房温存術では、適切な切除範囲を見極めるため術前に高分解能乳房MRI検査を施行し、病変の拡がり診断を行い、適切な切除範囲を決定しています。さらに術中・術後には詳細かつ厳密な病理学的検索を行い、追加切除の必要性を病理医とともに検討しています。
切除した腫瘍組織は、免疫組織化学や分子生物学的方法により種々の予後因子の解析を行い、腋窩リンパ節転移の有無と併せて検討し、悪性度の高い症例や再発の危険が高い症例に対して、科学的根拠に基づきご本人・ご家族と相談の上、積極的に術後全身薬物療法を通院で行っています。
術後はこれらの薬物療法以外に、患側上肢の運動障害・肩関節拘縮の改善に積極的に取り組んでいます。また術前・術後の患者さんには、看護師が中心となり精神的なケアを図る体制を整えるとともに、乳房切除後に必要な補正用品や下着の紹介をしています。

乳房再建

術後の乳房変形に伴う精神的・身体的なマイナス面を補う目的で、当院では形成外科と協力し乳房再建を行っています。乳癌手術時に組織拡張器(エキスパンダー)を挿入し、後日、形成外科で腹直筋皮弁やシリコンインプラントを用いた乳房再建術を行い、QOL向上に努めています。

進行・再発乳癌治療

進行・再発乳癌に対しても、化学療法・内分泌療法・分子標的療法・放射線療法を組み合わせた積極的な治療戦略を行っています。これらの治療を行う際にも最新の科学的根拠に基づく治療を原則としつつ、患者さんの希望や状況を十分に考慮し、個々にあわせて治療法を選択するテーラーメード治療を心がけています。
当科で行っている術前・術後化学療法や、進行再発乳癌に対する分子標的薬を含む化学療法は、リクライニングシートやベッドを装備した外来化学療法センターで、専任の医師・看護師・薬剤師により安全で確実、迅速で快適な外来化学療法を行っています。
さらに当科は、新規抗癌剤など種々の薬剤の開発試験・全国規模の臨床試験にも積極的に参加しており、他の施設と比較して治療の選択肢が多く、 既存の治療が無効となった進行・再発乳癌に対する治療成績の向上に努めています。このためこの領域においても神奈川県内はもとより国内においても先駆的な施設であるとされています。さらに薬物療法に併せて、転移性脳腫瘍に対しては脳神経外科と放射線治療科、転移性骨腫瘍に対しては整形外科および放射線治療科と協力して、手術療法や放射線治療を積極的に組み合わせることで患者さんのQOLを高めています。セカンドオピニオンも積極的に受け入れており、全国から相談のために来院されています。
進行・再発乳癌の終末期おいては、緩和ケア医や精神科医、緩和ケア専門看護師が中心となり構成された緩和ケア専門チームが精神的かつ身体的なケアを積極的に行っています。

がんゲノム医療(がん遺伝子パネル検査)

がん遺伝子パネル検査は今までになかった新しい検査です。2018年4月1日に厚生労働省は、この新しい検査を必要とする患者さんが全国どこにいても受けられるように、がんゲノム医療を推進する拠点として、検査ができる施設を指定しました。東海大学医学部付属病院は、2018年4月1日にがんゲノム医療連携病院に、さらに2019年9月19日にはがんゲノム医療拠点病院に認定され、がん遺伝子パネル検査を実施しています。当科でもがんゲノム医療を希望される患者さんには積極的に検査を行っています。

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