視診では乳房の左右差、皮膚に「えくぼ」、陥凹(へこみ)、発赤や盛り上がりがないかを確認します。さらに乳頭に湿疹や「びらん」がないかも確認します。
次に触診で硬結(硬い部分)やしこりの有無を確認します。また乳頭から分泌物がでないか、脇のリンパ節が腫れていないかも確認します。
乳房の専用のX線撮影のことを「マンモグラフィ」といいます。乳房は柔らかい組織でできているため、専用のレントゲン装置を使って撮影します。マンモグラフィは触診ではわからないような無症状な女性の乳がんを検出するための感度の高い検査法の一つです。
がんを疑わせる細かい石灰化や小さなしこりを発見します。また触診で異常の認められた女性を対象に、さらに精密な検査を行う目的もあります。マンモグラフィの実際は乳房を約4〜5cmの均等な大きさに圧迫し、乳腺や脂肪組織を上下方向から1枚、左右方向から1枚の左右各2枚ずつ計4枚の写真を撮影します。
超音波を乳房に当てて乳房内部からの反射波(エコー)をとらえて画像化して乳腺の状態を調べる検査法です。マンモグラフィと違い検査に伴う被曝や痛みもないため、安全に繰り返し検査ができます。マンモグラフィ同様5mm程の微少な病変の存在やその性質、乳管の拡張の有無や、リンパ節腫脹の有無も見ることができます。またリアルタイムな表示が可能なため、超音波画像を見ながらの細胞診や針生検などの細胞や組織の検査などにも用いられます。
最近は超音波検査で腫瘤や周囲組織の血流の情報や、「エラストグラフィー」という方法により病変の固さを見ることのできる装置もあります。
磁場と電波によって生じる生体内の水素原子核(プロトン)の共鳴現象を測定し、コンピュータ処理により体内を画像化して観察する方法です。乳房を撮影する際にはうつ伏せになり乳房を下垂させて、乳房専用の装置を用いて撮影します。撮影の途中で造影剤を注射することで非常に細かい病変や、しこりの拡がりを三次元的に写し出しあらゆる方向から断面図を見ることができる利点があります。また異常乳汁分泌などの際には乳管内を詳細に見ることもできます。無侵襲・無障害の検査ですが、専用装置が必要であり強力な磁気を用いて撮影するため、体内に金属やペースメーカーが体内にある方は検査ができないことがあります。
レントゲンを用いて人体の輪切り像を写す検査で、臨床上あらゆる臓器において頻繁に使用されている検査です。MRIと比較すると普及率が高く、撮影速度が早く、仰向けで撮影できるなどの利点があり、乳房検査においても使用されます。さらにリンパ節や、肺・肝などの検査が同時に行える利点があります。しかし小さな病変を描出するには限界があり、また被曝という問題もあるため頻回には行いません。
乳頭から分泌物がでている時に、その乳管内を調べるために行う検査です。分泌物のでている乳管に細い管を通して、造影剤を少量注入してからマンモグラフィを撮影します。乳管内に狭い部分や乳管が途切れていないか、また乳管内にしこりがないかを確認します。
がん細胞を見つける検査法のため、一般の乳房検査で行うことはありません。がん細胞が正常細胞よりも3〜8倍多くブドウ糖を摂取する特性を利用した、従来とは異なる検査法です。18F-FDG(2-deoxy-2-[F-18] fluoro-D-glucose)というブドウ糖に微量の放射線が付いた薬剤(アイソトープ)を体内に注射し、その体内分布を画像化するする方法です。これにより従来の検査で発見しにくかった、10mm以上の乳腺腫瘍の良・悪性の診断が可能になるとされています。さらに従来の検査法では発見の困難な小さなリンパ節転移や他臓器転移など、全身を1回の検査で確認することができます。しかしこの機械を設置している病院はまだ少なく、また糖尿病があると検査精度が悪くなり、さらに脳転移は検出困難と言われています。