多くの患者さんが、多かれ少なかれ、様々なこころの過程を経てがんと向き合っているといわれており、不安を感じるのは特別なことではありません。
初めてがんと知ったときには、「まさか」「そんなはずはない」あるいは「やっぱり」などというショックや絶望感などの複雑な気持ちになることが多いと言われています。
急なことなので、「衝撃的な段階」ともいわれます。いろいろ予想して、こころの準備がある場合でも、または知識や情報がたくさんあったとしても、こころが動揺してしまうことでしょう。あとからこの時期のことを振り返って「頭の中が真っ白になった」と話される患者さんもいらっしゃいます。この状態は2〜3日続くこともありますが、1晩くらいで済んでしまう場合もあります。
衝撃的な段階を通り過ぎると、「診断前の時期にもどりたいな」といった漠然とした思いや、自覚症状がない場合は「夢なのかもしれない」と思う事があります。
これらは「否認」というこころの動きで、そう思うことで自分自身を守っているのです。
衝撃や否認の時期が過ぎると、次に「今までのペースでは仕事ができなくなる」「好きなように旅行に行けなくなってしまう」などと思って、家庭や職場における自分の役割やイメージが少しずつ変わっていく寂しさや喪失感を感じてしまうことがあります。
さらに「1年前に受診していれば、もっと早くみつかったのに」「あんなに無理して働いたからこんなことになったのだ」などと後悔の気持ちがわいてくる場合もあります。
このように、しみじみとしたり、怒りっぽくなったり、悔やんだり、さまざまな感情が1日のうちに何回もあらわれて、気持ちが不安定でふさぎ込んだり食欲が落ちたり不眠の状態が1〜2週問続く患者さんが多いようです。
しかしこのような不安定な状態は通常長くは続きません。担当医から今後の治療計画の説明があり、入院の時期が近づいてくるなど、非常に現実的な課題が待っているため、「やはり、そうだったのか」という思いに少しずつ切り替わり、だんだん落ち着いてきます。これが「適応の時期」で現状を把握し適応していくようになります。
多くの方は治療開始までにこのようなこころの動きを経験されているようです。
またこの心理状況は刻々と変化していきます。なかには、治療が終わってしばらくして初めて、同様のこころの動きを経験される患者さんもいらっしゃいます。
治療を受けている間は病気と闘うことに意識が集中していて、治療が終わってからさまざまな思いが押し寄せてくることもあるようです。
こころの状態はとても変わりやすいので、治療中や治療が終わってからも、急に気分が落ちこんでしまう時期があるでしょう。時期に応じて不安に思う内容は変化するようです。
しかし、不安定な状態は通常一時的なもので、日常生活の現実的な問題に取り組んでいる間に落ち着いてくる場合がほとんどです。
治療中不安に陥ることは患者さんの調査から、約3割の方に不安や抑うつ(気分が沈むこと)を示すことが知られています。これはがんに罹った時の自然な反応であると言われています。すなわち患者さんご自身が弱いためではありません。病気のことや将来への不安を感じないひとはいません。
まずは、担当医が説明した情報を十分に理解することから考えましょう。
病気についての情報は、本やインターネットから得ることもできます。しかしその情報は、がんの情報に過ぎず必ずしもご自身の状況にあてはまるとは言えません。担当医が説明した情報と、ご自身が知っている情報を自分なりにまとめ、疑問に感じたこと、もっと知りたいことは何か、整理して納得するまで説明をお聞き下さい。
そして漠然とした不安を解消していきましょう。
私たち乳腺グループは皆さんが納得するまでご説明致します。