わきのリンパに対する治療
脇のリンパ節に転移があるかどうかは手術前の画像診断や細胞診などで確認できることもありますが、多くの場合は手術で取り出して顕微鏡で見てみないとわかりません。
脇のリンパ節を取る方法には2つあります。
術前の画像検査でリンパ節にがんの転移がありそうな場合や術前の細胞診でリンパ節転移の診断が付いている場合には、脂肪と一緒にわきの下のリンパ節をひとまとめにして10〜20個程取る手術を行います。この手術を「腋窩リンパ節郭清」と言います。取り出したリンパ節はひとつひとつ顕微鏡で見て、がん細胞がいくつのリンパ節に入り込んでいるかその数を調べて、再発の危険率を判断し術後の治療方針を決める指標にします。もちろん転移しているがんはリンパ節と一緒に取リ除かれますので治療にもなります。脇の下のリンパ節は腕に近い位置からレベルⅠと呼び、最も体の中心に近い部分をレベルⅢと分類されています。現在はレベルⅠのリンパ節郭清を行うのが一般的ですが、手術中にさらに内側が腫れていることが確認できればレベルⅡやⅢのリンパ節も取ることがあります。
しかし、リンパ節郭清を行なうと同じ側の腕の内側や背中がしびれたり、手術後に一時的に肩の運勤障害が起こるため、リハビリテーション(回復のための体操)が必要となります。また術後数ヶ月〜数年経過してから「リンパ浮腫」という腕のむくみが起こりやすくなります。このリンパ浮腫は、一度発生すると治すのは非常に難しいむくみです。
標準方法はリンパ節郭清ですが、リンパ節郭清を行ったが術後によく調べたらリンパ節に転移していない場合、患者さんは結果的に不必要に体に負担のかかる手術を受けたことになります。 このような問題を解消し、またリンパ節郭清にともなう後遺症をできるだけ少なくするために始まった方法が「センチネルリンパ節生検」です。 「センチネルリンパ節」は「見張リリンパ節」とも呼ばれ、がん細胞がリンパの流れにのって最初にたどり着くと思われるリンパ節(わきの下の入リ口にある)のことです。通常センチネルリンパ節は1〜2個あります。手術前に弱い放射線を発している薬剤や色素を注射し、この薬剤が入り込んだリンパ節を手術中に取り出し、顕微鏡で観察します。そこに転移がなければ「がん細胞がリンパ節の入リ口まで流れてきておらず.その奥にある他のリンパ節にも転移していない。」と予測する事ができます。
転移が無い事が予測できれば前の項で述べたリンパ節郭清の手術を省いたリ、取る範囲を小さくしたりする事ができ、手術後の後遺症(しびれ、むくみなど)を少しでも減らすことができます。触診や画像ではっきりとした転移がない方がこの生検の対象となります。